林有造の邸宅として明治二十二年に建設された林邸。
以来百三十年に渡り、自由民権運動の系譜を連綿と引き継ぐ邸宅として親しまれてきました。
林邸には連続する大きな座敷「月見の間」や、見張り番が控える「見張り小屋」、一階と二階をつなぐ隠し梯子など独特の機能を多彩かつ優美に盛り込んだ建築です。
宿毛市に寄贈された林邸は単に復元されるだけでなく、地域の人たちの活動や歴史が紡がれていく場所として生まれ変わりました。
再生前の老朽化した林邸は、所々に瓦が割れ、雨漏りし、天井が落ち、柱梁が割れるなど、いわば満身創痍の状態でしたが、それでも随所に施された装飾や立派な建材は建設当時の姿を十分今日に伝えていました。
耐震改修や最低限の変更を加えながら、古材を最大限に活かした歴史的特徴を保存・復元した「文化的改修」と、現代の使われ方に合わせた大幅な改修、増築「現代的改修」を行うことで、これからも歴史が紡がれていく場所となることを目指しました。